こんにちは。建築好きのやま菜です。
今日は日本財団が渋谷区と連携して進める話題のプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の公衆トイレを建築巡りしてきましたので、すべてのトイレについてレポートしたいと思います。
THE TOKYO TOILETプロジェクトは有名建築家やデザイナーらを起用して清潔でデザイン性がよい次世代のトイレを生み出していくプロジェクト。
最終的には2023年3月に全17のトイレが完成しましたが、このブログではすべてのトイレについて実際に訪れてみたので、その見所や感想をレポートしていきたいと思います。
では早速見ていきましょう!
※2023年3月笹塚緑道公衆トイレ・西参道公衆トイレ更新
1.恵比寿東公園公衆トイレ(槇文彦)
最初に紹介する恵比寿東公園公衆トイレは、恵比寿駅を東に5分ほど歩いた所にあるトイレです。
このトイレを設計した槇文彦氏と言えば、代官山のヒルサイドテラスをはじめ幕張メッセや東京体育館の設計者としても知られる日本を代表する建築家です。
恵比寿東公園公衆トイレは小さく分節された各トイレの上に柔らかな金属製の屋根が架かっているデザインですが、訪れてみると屋根の下に路地が出きて、回遊性を持った小さな町のようなトイレとなっています。
槇氏の設計した代官山ヒルサイドテラスは街の要素を引き込み、散策する街としての代官山を形作った建築でしたが、こちらのトイレはまさにヒルサイドテラスを設計した槇文彦氏らしいトイレとなっています。
ちなみにこの公園はタコ型の巨大滑り台が有名な公園でもありますが、このトイレはさながらイカにも見えますね 笑
設計:槇文彦
所在地:東京都渋谷区恵比寿1-2-16
アクセス:恵比寿駅より徒歩約5分
竣工:2020年
2.東三丁目公衆トイレ(田村奈穂)
続いて紹介する東三丁目公衆トイレは恵比寿駅東口を出て北へほどなく歩いた三角の極狭敷地に建てられたトイレです。
鮮やかな赤の外装が特徴的なトイレは、シンプルながら見る角度によって印象が変わる彫刻作品のようです。
道路に対して入口の方向をエッジのようにたてることで、最小限のスペースで公衆トイレの動線と視線のコントロールをしているのが面白いです。
実際に入ってみると思った以上にコンパクトで、外とのつながりが強いトイレでした。
私が訪れたときはタクシーの運転手さんが目の前に車を止めて使用していたりして、目立っているなぁと感心しました。ちなみに現在供給開始されている17のトイレのうち、女性がデザインしたトイレはこちらのトイレと笹塚緑道公衆トイレの2つとなっています。
設計:田村奈穂
所在地:東京都渋谷区恵比寿東3-27-1
アクセス:恵比寿駅より徒歩約5分
竣工:2020年
3.恵比寿公園公衆トイレ(片山正通)
続いて訪れた恵比寿公園公衆トイレは、15枚のコンクリートの壁で構成されたトイレです。
コンクリートによってつくられた壁は古木のようであり洞窟のようでもあります。
垂直の壁が強調されるデザインで、上方から差し込んでくる光がとても印象的。
公衆トイレというと上からの光がほとんどないものばかりですが、こちらのトイレはそんな公衆トイレの常識をくつ返そうとした意図が感じられます。
この公園は何度も訪れたことがあったのですが、新しいトイレができた違和感がびっくりするほどなかったのも面白かったです。
まるでずっと昔からそこにあったかのような、古くて新しいデザインに注目です。
設計:片山正通
所在地:東京都渋谷区恵比寿西1-19-1
アクセス:恵比寿駅より徒歩約6分
竣工:2020年
4.はるのおがわコミュニティパーク公衆トイレ(坂茂)
続いて少し移動して、代々木八幡駅からほどなく歩いたところにあるはるのおがわコミュニティパーク公衆トイレは、建築家坂茂氏がデザインしたトイレです。
その特徴は何といっても鍵を締めると不透明になるガラスで作られた外壁で、普段は中が丸見えになる大胆なデザインで大きな話題になりました。
透明なトイレは今までの公衆トイレのイメージを覆す明るく清潔で美しい建築が目指されていて、最初はちょっと入るのに勇気がいりますが、これから公衆トイレのイメージが変わっていきそうな挑戦的なデザインとなっています。
設計:坂茂
所在地:東京都渋谷区代々木5-68-1
アクセス:代々木八幡駅より徒歩約8分、代々木公園駅より徒歩約8分
竣工:2020年
5.代々木深町小公園公衆トイレ(坂茂)
はるのおがわコミュニティパークのすぐ隣の深町小公園にある代々木深町小公園公衆トイレも、坂茂氏がデザインしたトイレです。
はるのおがわコミュニティパークのトイレが青・緑系のガラス色だったのに対して、こちらのトイレは赤・黄色の暖色系が特徴。これは公園内の遊具の色を意識したもので、実際に訪れてみると実によくマッチしています。
THE TOKYO TOILETの中で1人の建築家が複数のトイレをデザインしているのははるのおがわコミュニティパークと代々木深町小公園公衆トイレだけですが、2つの公園のトイレを併せてみてみることで、公園の連続性が感じられて面白いです。
設計:坂茂
所在地:東京都渋谷区富ケ谷1-54-1
アクセス:代々木八幡駅より徒歩約5分、代々木公園駅より徒歩約3分
竣工:2020年
6.西原一丁目公園トイレ(坂倉竹之助)
続いて紹介するのは京王線の幡ヶ谷駅を降りてすぐのところにある西原一丁目公園トイレです。
こちらのトイレのデザインを手掛けたのは近代日本を代表する建築家 坂倉準三氏の息子でもある建築家 坂倉竹之助氏。
外観はグリーンを基調としたシンプルなデザインですが、中に入ると印象が一変、木々のシルエットが半透明のガラスに映し出されます。
夜はトイレ自体が「行燈」として公園を明るく照らす照明装置としても機能して、代々木八幡の坂茂氏のガラスのトイレとは一味違ったスマートな美しさが際立ちます。
男女の分けがなかったり、自動ドアや音声案内があったりと、実は他ではなかなか見られない実験的なトイレであることも注目です。
設計:坂倉竹之助
所在地:東京都渋谷区西原 1-29-1
アクセス:幡ヶ谷駅より徒歩約5分
竣工:2020年
7.神宮通公園トイレ(安藤忠雄)
7つ目に訪れた神宮通公園トイレは、2020年に完成するTHE TOKYO TOILETプロジェクト最後のトイレで、デザインを手掛けたのは世界的建築家 安藤忠雄氏です。
今まで見てきたトイレの中で唯一円形の形状を取り入れたトイレで、大きく庇がせり出してトイレの周りをルーバーが取り囲んでいる構成が特徴的なトイレです。
ルーバーの間には曇りガラスが挟まれていて、外の光を柔らかに取り込みながら風が通る、気持ちのいい空間となっています。
微妙に傾いたルーバー壁の間を通るときには写真からでは感じることのできない気持ちよさと開放感があり、今まで見てきた7つのトイレの中で訪れる前と実際に訪れてみたときの印象に一番ギャップがあったのがこの安藤氏のトイレでした。
ちょっと引き気味に公園と一緒に見てみると、このトイレが一つの樹木のように見えてとても腑に落ちたのが印象的でした。
設計:安藤忠雄
所在地:東京都渋谷区神宮前 6-22-8
アクセス:渋谷駅より徒歩約7分
竣工:2020年
8.神宮前公衆トイレ(NIGO®)
2021年の最初にオープンしたのは、神宮前1丁目の交差点に建つこちらの神宮前公衆トイレ。
デザインはクリエイティブディレクター・ファッションデザイナーのNIGO®氏が手掛け、温故知新をコンセプトにした可愛らしいトイレです。
かつて代々木公園近辺に設けられたワシントンハイツをデザインソースにして建てられたというトイレは、まさに古き良き時代の一軒家のようでもありますが、よくよく観察すると絶妙の配色や、広く明るく見せるための細かい空間配置など、デザイナーのきめ細かい配慮を見ることが出来ます。
周りを囲う白い柵も可愛くて、原宿の風景に馴染みつつも埋もれないトイレとなっています。
設計:NIGO®
所在地:東京都渋谷区神宮前1-3-14
アクセス:明治神宮前駅より徒歩約5分
竣工:2021年
9.鍋島松濤公園公衆トイレ(隈研吾)
続いて訪れたのは渋谷の神泉駅からほどなく歩いたところにある鍋島松濤公園公衆トイレです。
デザインを手掛けたのは、今や日本一番有名な建築家と言ってもいい隈研吾氏で、コンセプトは「森のコミチ」。
元々ある傾斜に合わせて立体的に配置された5つの小屋は、ちょっとした山のようであり、公園の遊具のようでもあります。
訪れる前は杉板ルーバーがギラギラと取りつく様子がちょっとやりすぎているようにも思えたのですが、実際に訪れてみると公園の景観に自然と馴染んでいて、新しく魅力的な景観となっていたのが印象的でした。
設計:隈研吾
所在地:東京都渋谷区松濤2-10-7
アクセス:神泉駅より徒歩約7分
竣工:2021年
10.恵比寿駅西口公衆トイレ(佐藤可士和)
恵比寿駅西口のエビス像のすぐ隣に建つ恵比寿駅西口公衆トイレは佐藤可士和氏がデザインした公衆トイレ。
宙に浮かぶように4周ぐるりと設置された白のルーバーは、周囲の風景を反射しつつ、うっすらと向こう側の風景を透過させているのが印象的でした。
周りの風景に同化する昼間のデザインも良いですが、照明によって抽象的なトイレのボリュームが浮かび上がってくる夕暮れ時~夜のトイレも注目です。
儚さの中に確かな存在感を感じるトイレは、恵比寿駅西口の新たなランドマークになりそうです。
設計:佐藤可士和
所在地:東京都渋谷区恵比寿南1-5-8
アクセス:恵比寿駅より徒歩約1分
竣工:2021年
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後半は伊東豊雄氏や藤本壮介氏のトイレを含む残りの7つのトイレを紹介します。