今回は市ヶ谷にある市谷の杜 本と活字館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・市谷の杜 本と活字館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・市谷の杜 本と活字館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・市谷の杜 本と活字館の建築的な見どころや注目ポイント
1.大正時代に建てられた印刷工場兼営業所を復原・改修した建物を訪問
今日訪れたのは、市ヶ谷駅に2020年にオーした市谷の杜 本と活字館です。

市ヶ谷駅をでて閑静な住宅街を程なく歩いていくと、DNPの看板を冠した巨大なオフィスビルが見えてきます。
ここ市ヶ谷は日本を代表する印刷会社である大日本印刷の市谷工場と本社が置かれ、明治時代から日本の印刷業を支えてきた場所でもあります。
市谷工場・本社ビルは2010年代にはいり大規模な建替えプロジェクトが行われ、地上25階地下4階建て高さ約125mのDNP市谷加賀町ビルを中心とした新社屋と約2万㎡の緑地が整備されました。

今回訪れた市谷の杜 本と活字館もこの再開発によって整備されたもので、1926年に建てられた秀英舎(のちの大日本印刷)の印刷工場兼営業所を改修・復原した資料館・ギャラリーとして本と活字館が誕生しました。
改修・復原にあたっては、残された数少ない資料や写真を紐解き、綿密な調査と検討により当初の姿を残した建物が蘇りました。

元々の建物は2016年頃まで現役で利用されていました。約90年の歴史の中で正面部分が1層増築されたり、外部階段がとりつけられたりと増改築が繰り返されていましたが、今回のリニューアルで旧建物のシンボルでもあった時計塔が奥に聳え立ち、南東のエントランスが正面に鎮座する姿に戻りました。
建物の設計は、鉄筋コンクリート造研究の第一人者であった土居松市と、以前このブログでも紹介した宇都宮のカトリック松が峰教会やカトリック神田教会の設計者としても知られる宮内初太郎が手掛けました。

一見してシンプルな建物ですが、よく見るとスマートで力強いコンクリートの外装の中にデザインされた細かい装飾や凹凸によって変化に富んだ表情を見せていて、大正時代らしい優雅でモダンな外観となっています。
2.表情豊かな空間と魅力溢れる展示を堪能
建物の内部は1階が受付カウンター、印刷所と呼ばれる印刷工場の再現展示室、喫茶店、2階が制作室とよばれる体験やイベントスペース、企画展示室、ショップコーナーとなっていて、入館料無料で楽しむことができます。

館内は精巧なレリーフや装飾、力強い鉄筋コンクリートの構造体など見どころが満載です。


さらに館内の展示も充実していて、当時の機械や道具、普段は見ることのない印刷のしくみなどをたっぷりと堪能できます。

印刷所脇の展示スペースでは、文字の原図から母型の彫り、鋳造、活字を拾って版を組み、印刷するまでの一連の流れを知ることができます。
普段中々見ることのない、文字がつくられ、実際の印刷物になるまでの工程は目から鱗の連続でした。

まさに職人技といえる細かい作業と、機械だからこそできる大量印刷が合わさることによって活字が世の中に広がっていく工程は、とてもスリリングです。

こちらは2階に上がる階段室ですが、縦長の窓からはたっぷりの自然光が入り込み気持ちが良いです。
館内のサインも素敵で、降り注ぐ自然光が、サインの彫りにシャープな影を落としています。

階段を上がった正面は企画展示室になっています。
私が訪れた時は、「発見!雑誌づくり工場」展が行われていました。
壁面全体を使って雑誌が完成するまでの工程の中から、「印刷」と「製本」に焦点を当てた展示がされていて、とても興味深かったです。

展示は時期ごとに変えられて、様々なテーマで催されていてとても面白いです。
最初は建物目当てに訪れて、丁寧に復原された建築も興味深かったのですが、展示も見応えがありとても愉しめました。
3.併設のカフェで昔懐かしのメニューを堪能
2階は奥に階が制作室、ショップコーナーがあり、さらに奥は休憩スペースとなっています。
こちらの休憩スペースでは1階の喫茶店で購入したドリンクなどを頂くことができます。

ベンチのデザインも素敵で、活字への思い入れをひしひしと感じます。
展示を一通り堪能した後は、1階の喫茶店でドリンクとお菓子を頂きます。

喫茶店で購入したメニューは、先程の2階のスペースの他、1階奥のスペースで頂けます。

大正末期にできた建物ということで、ドリンクはミルクセーキをチョイスしました。

ほんのり甘くて優しい味わいのミクルセーキが体に沁みます。
私が訪れた少し汗ばむ季節だったのですが、砕いたシャリシャリの氷の舌触りも心地よかったです。
メニューは他にもコーヒーや紅茶があったり、バームクーヘンなどのお菓子もあるので、展示を見たあとのひと休憩にピッタリでした。

素敵な建物と展示をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメの建物なので、皆さんも機会があれば是非訪れてくださいね。
【読むだけで建築について詳しくなれるイチオシの漫画】

実際に一級建築士の資格を持つ人気R18漫画家が描く、唯一無二の建築漫画が話題になっています。
話ごとに建築のデザインはもちろん、法規や構造、施工や不動産に渡って幅広く扱っていて、建築好きなら毎回ワクワクしながら読めて、建築の知識も吸収できる超おススメ漫画です
>Amazonで詳細が読めます
また、当ブログでも漫画のレポートと、漫画と舞台となった亀戸の建築巡りについて紹介していますので、是非併せてご覧ください。
関連記事
・建築本「一級建築士矩子の設計思考」がスゴい!話題の本格建築漫画をレポート

2024年4月18日には「一級建築士矩子の設計思考」第3巻が発売になりました。
市谷の杜 本と活字館
原設計:土居松市+宮内初太郎
改修・復原設計:久米設計
所在地:東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
アクセス:市ヶ谷駅より徒歩約7分
竣工:1926年(2020年改修・復元)
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜・火曜(祝日の場合は開館)、年末年始
入館料:無料
公式HP:https://ichigaya-letterpress.jp/index.html


↑建築系のブログランキング。よければクリックして応援してもらえると嬉しいです。
建築やデザイン好きな人は、他にも面白いブログや参考になるブログがいっぱいあるので是非見てみてください^^