今回は、富山県の富山駅周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・富山駅周辺エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・富山駅周辺エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
1.富山県庁舎

まずはじめに紹介する富山県庁舎は、富山駅の南側エリアに建つ地上5階建ての県庁舎です。
当時としては珍しかった鉄筋コンクリート造の堅牢で重厚なイメージと、両翼部に見られる優雅にカーブした曲線が合わさった建物は、富山の近代化の象徴でもあります。
建物全体は水平に広がりながら、雁行して迫り出しつつ垂直性を強調したエントランスのデザインも注目ポイント。
長い歴史の中で改修されている部分も多いですが、随所に当時からの記憶を残した富山駅周辺のランドマークです。

設計:大熊喜邦
所在地:富山県富山市新総曲輪1-7
アクセス:県庁前駅より徒歩約1分
竣工:1935年
備考:国登録有形文化財
ちなみに富山県庁舎の道路を挟んで向かいに建つ富山市役所も注目の建築です。
■富山市役所

地上8階地下2階建ての市役所は新旧の都市軸に沿って配置された東西2つの棟に分れているのが特徴。
2棟の間は8層の高さの巨大なアトリウムとなっていて、都市のスケールが役所内に連続する素敵なパブリックスペースをつくりだしています。

設計:日本設計
所在地:富山県富山市新桜町7-38
アクセス:電気ビル前駅より徒歩約2分
竣工:1992年
2.富山県総合福祉会館サンシップとやま

富山県総合福祉会館サンシップとやまは、富山駅から南に伸びるすずかけ通りから一本道路を入ったところに建つ地上7階地下2階建ての福祉施設です。
宙に浮くガラスの船を彷彿とさせるダイナミックな外観が特徴の建物は、ガラス張りの建物の中にはホールや図書館、会議室が立体的に配置されていて、ピロティや屋上テラス、アトリウムがそれらの機能を接続しています。
街の延長のような透明性と遠くからでも一目でわかるランドマーク性を兼ね備えた建物は、竣工から四半世紀経った現在も富山のランドマークのひとつとして市民の活動の場となっています。


設計:池原義郎建築設計事務所
所在地:富山県富山市安住町5-21
アクセス:県庁前駅より徒歩約1分
竣工:1999年
3.高志の国文学館

高志の国文学館は、サンシップとやまから西に程なく歩いたところに建つ地上2階地下1階建ての文学館です。
元々この場所には旧知事公館(1978年竣工)が建てられていましたが、文学館の建設に当たっては旧知事公館の建物を活かしつつ建物東側に展示室や事務所など7つのボリュームを蔵に見立てて配置し、その間を土間に見立てたロビーや通路で繋いでいるのが特徴です。
1つ1つのパネルが異なる表情をみせるアルミ鋳物パネルの内外装や、外部の自然に視線がいく抜け感があるロビー空間も魅力的で、富山の歴史や土地を感じながら文学の世界を体験できる素敵な建築です。


設計:シーラカンスアンドアソシエイツ
所在地:富山県富山市舟橋南町2-22
アクセス:県庁前駅より徒歩約3分
竣工:2012年
備考:第57回BCS賞
4.富山電気ビルデイング

富山電気ビルデイングは、富山駅から程なく歩いたところに建つ地上5階地下1階建てのオフィスビルです。
シブい外観の建物ですが、実は昭和初期に北陸電力の前身であった日本海電気の本社として建てられた歴史ある建物なのです。
かつては社交クラブやホテル、能舞台も併設され、昭和天皇が宿泊されたこともある富山を代表する建物でもありました。
リズミカルに並ぶ柱型や頂部に伸びるバルコニー、さりげないアクセントとなっている丸窓などシンプルだけれど見どころの多い富山を代表する近代建築となっています。


設計:富永襄吉+内藤多仲
所在地:富山県富山市桜橋通り3-1
アクセス:電気ビル前駅より徒歩約1分
竣工:1936年(本館)、1956年(新館)
備考:国登録有形文化財
5.パレブラン高志会館

パレブラン高志会館は、富山駅の南口をでて東に程なく歩いたところに建つホテル、会議室等の複合施設です。
幾何学図形を立体的に積み上げたような建物は、建築家の黒川紀章氏が設計を手掛けています。
天から光を導くアトリウムや、各所で絶妙にカーブする外壁など随所に黒川紀章氏らしい造形や内外の関係性が埋め込まれています。
今みるとやや地味さもありますが、アイコニックな造形やドーナッツ型の客室配置など、この時代の建物らしい特徴が随所にあらわれているのも注目ポイントです。


設計:黒川紀章建築都市設計事務所
所在地:富山県富山市千歳町1-3-1
アクセス:電気ビル前駅より徒歩約2分
竣工:1986年
6.富山県教育記念館

富山県教育記念館は、パレブラン高志会館の向かいに建つ地上5階地下1階建ての展示室、教育関連団体の事務室、会議室等の複合施設です。
近代教育制度100年を記念して建てられた建物は、中央のエレベーターや階段などのコアを中心に執務室と市民が気軽に立ち寄れる展示空間が南北それぞれに分離して配置されています。
人々を誘い込むようなピロティとダイナミックな造形も魅力的で、竣工から半世紀近く建つ現在も力強くその姿を保つ、まさに記念碑的な建築です。


設計:山本公也+日本総合建築事務所+S.D.G.システムディベロッピンググループ
所在地:富山県富山市千歳町1-5-1
アクセス:電気ビル前駅より徒歩約2分
竣工:1976年
7.富山市郷土博物館(富山城)

富山市郷土博物館(富山城)は、1954年に開かれた富山産業大博覧会の記念建築物として建てられた博物館です。
一見すると戦後間もなくに建てられたとは思えない建物は、全国の天守閣を参考にして設計されたもので、博物館内では400年以上にわたる富山城の歴史を様々な展示で知ることができます。
竣工から70年以上経った建物は国の登録有形文化財にもなっていて、富山のシンボルとして定着しています。


設計:信建築事務所
所在地:富山県富山市本丸1
アクセス:国際会議場前駅より徒歩約3分
竣工:1954年
備考:国登録有形文化財
8.富山市民プラザ

富山市民プラザは、市制100周年事業の一環として1989年に建てられたホール、市民センター、会議室、商業施設、スポーツクラブ等の複合施設です。
市民生活における様々な施設が複合し、お互いに重なり合いながらハレとケが混在する多様な場がつくられているのが特徴で、施設内を歩くと驚くほど多様な場が一定の秩序のもとに複合していることが体感できます。
建築の中にあって都市の一部のような、区切られているようで繋がっている空間構成はまさに槇文彦氏の建築の真骨頂。
各所にデザインされたドラマチックな空間が体験できる富山の隠れた名建築です。


設計:槇総合計画事務所
所在地:富山県富山市大手町6-14
アクセス:国際会議場前駅より徒歩約2分
竣工:1989年
備考:第32回BCS賞
第4回公共建築賞
9.富山国際会議場

富山市民プラザからすぐのところに建つ富山国際会議場も、槇文彦氏率いる槇総合計画事務所が設計を手掛けています。
クリアなガラスの外装の中に、入れ子のように木格子のスクリーンが設けられているのが大きな特徴で、親しみやすい木質の屋内空間と多彩な表情を生み出しているのが面白いです。
スタイリッシュでニュートラルなデザインの中に、日本的な美意識や屋外空間との関わりが丁寧に織り込まれているのも特徴で、富山市民プラザと共にじっくり味わいたい富山の注目建築となっています。


設計:槇総合計画事務所
所在地:富山県富山市大手町1-2
アクセス:国際会議場前駅より徒歩約1分
竣工:1999年
10.富山第一銀行 旧本店

富山第一銀行 旧本店は、富山城の南東エリアに建つ銀行建築です。
現在も残るクラシックな建物は戦後間もない1946年に建てられた木造社屋を改修してつくられたもので、交差点に向かって優雅にカーブする外観と重厚なオーダーの柱が特徴の建物となっています。
増築にあたっては多くの銀行建築を手掛けたことでも知られる建築家の西村好時氏の第一銀行を参考にしてデザインされているのも注目ポイント。柱や建具の装飾など見どころも多いので、訪れた際には是非近づいてその建築美をじっくり堪能してみてほしいです。


所在地:富山県富山市総曲輪2-2-8
アクセス:荒町駅より徒歩約2分
竣工:1946年、1951年
11.北陸銀行本店

北陸銀行本店は、平和通り沿いに建つ地上6階地下2階建ての地方銀行の本店ビルです。
柱型がリズミカルに並び、明快な構成と合理的な動線処理がなされた建物は、富山の近代オフィスビルのはしりであり、当時は東京の最新のオフィスビルと比べても遜色のない富山のランドマーク的な建物でした。
といえます。
建物内にはコロネートと呼ばれる商店街とつながる通路も設けられていて、街の顔でありハブであったことが窺えるのも素敵です。


設計:松田平田設計事務所
所在地:富山県富山市堤町通り1-2-26
アクセス:西町駅より徒歩約2分
竣工:1961年(1973年増築)
備考:国登録有形文化財
12.TOYAMAキラリ

TOYAMAキラリは、富山駅の南側エリアに建つ地上10階地下1階建ての銀行・図書館・美術館等の複合施設です。
路面電車を降りると見えてくる外観は、建替え前の建物の縦ストライプ柄を継承しつつ、富山の主産業であるガラスやアルミ、御影石がリズミカルに並ぶデザインとなっているのが特徴。
内部は建物を貫く吹抜けを中心に、キラキラと輝くガラスや鏡と杉材のルーバーが森の木々のようにあしらわれていて、中を巡るのが楽しい建築となっています。
また、2階にはいるCafe小馬は、美術館とのコラボメニューや季節限定のスイーツも堪能できるので、この建築を訪れた際は是非立ち寄ってみてほしいです。


設計:RIA+隈研吾建築都市設計事務所+三四五建築研究所
所在地:富山県富山市西町5-5
アクセス:西町駅より徒歩約1分
竣工:2015年
備考:第58回BCS賞
13.風と光の塔

風と光の塔は、富山駅から北に伸びるプールバールと呼ばれる通りを程なく歩いたところに建つモニュメントです。
21世紀を記念してつくられた塔は高さも21m。デザインを手がけたのは建築家・プロダクトデザイナーとして知られる黒川雅之氏で、構造デザインを手掛けたのはちょうど同じ年につくられたせんだいメディアテークの構造設計を行った佐々木睦朗氏です。
金属のリングがうねるように上昇するモニュメントは、今や街ゆく人もほとんど気にせず通り過ぎて日常の風景となっていますが、まさに21世紀のはじまりを思い出させてくれる記念碑となっています。


設計:黒川雅之建築設計事務所
所在地:富山県富山市奥田新町7
アクセス:富山駅より徒歩約7分
竣工:2000年
14.富岩運河環水公園

富岩運河環水公園は、富山駅北側エリアの富岩運河南端の船溜まりを整備してつくられた公園です。
富山の近代化にも貢献してきた土木・環境遺産のポテンシャルを活かしつつ、遊歩道や付帯施設が整備されていて、平日・休日問わずに多くの人々が集う親水空間が形つくられています。
運河と一体化するような水盤やカーテン状に落ちる滝空間、散策しながら変化していく風景など広大な公園の随所にドラマチックで魅力的な風景が広がっていて、市民の憩いの場となっています。


設計:仙田満/環境デザイン研究所
所在地:富山県富山市湊入船町
アクセス:富山駅より徒歩約10分
施工:1999年
備考:2001年度グッドデザイン賞
15.富山県美術館

富山県美術館は、富岩運河環水公園の西側に建つ地上3階建ての美術館です。
目の前に広がる環水公園を包摂するようなデザインや、風景を切り取るスクリーンとしてのガラスの外装など、街との関係性が丁寧にデザインされているのも注目ポイント。
また、オノマトペの屋上と名付けられた屋上空間も心地よく遊び心に満ちているので、訪れた際は是非立ち寄ってみてほしいスポットです。
館内にはアートとイートをコンセプトにしたレストランBiBiBi & JURULiや地元のベーグル専門店による新形態のカフェSwallow Cafeなどがはいっているので、展示を見たあとはこちらのレストランやカフェでその余韻に浸るのがオススメです。


設計:内藤廣建築設計事務所
所在地:富山県富山市木場町3-20
アクセス:富山駅より徒歩約15分
竣工:2017年
備考:第60回BCS賞
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