こんにちは。建築好きのやま菜です。
本日は石川県の金沢にある谷口吉郎・吉生記念金沢建築館に訪れてきましたので、建築好きの視点からその魅力やポイントをレポートしたいと思います。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館は金沢出身の建築家 谷口吉生氏が設計し、建築家親子2人の名前を冠して「建築」や「街」にフォーカスした日本では珍しい建築をテーマにしたミュージアムです。
建築やアート好きの人は絶対楽しめる新スポットとなっていますので、気になる方は是非最後までご覧いただけると幸いです。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館の建築的な見どころや注目ポイント
1.金沢に建築好き必見のスポットが誕生
金沢と言えば兼六園や茶屋街、金沢21世紀美術館など年間を通じて多くの人が訪れる人気の観光地ですが、そんな金沢に2019年7月にオープンしたのが建築・都市についてのミュージアム「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」です。
親子で日本を代表する建築家である谷口氏でしたが、谷口吉郎氏の出身地であり谷口氏が生まれ育った邸宅の跡地に建てられたのが2人の名前を冠したこちらのミュージアムです。
この谷口氏の住まいがあった土地を金沢市に寄付したことからこのプロジェクトは始動し、関係者との様々な議論や検討を経て日本ではほとんど初めてといってもいい建築専門のミュージアムが完成しました。
またミュージアムの展示内容も単に建築に関わる展示をするだけではなく、かつて谷口吉郎氏が設計した迎賓館赤坂離宮 和風別館「游心亭」の建築空間がそのまま再現されていたり、金沢の街と応答するように意図され、建築自体がミュージアムの展示の一部となるように計画されている建築好き必見のスポットとなっています。
■谷口吉郎・谷口吉生って?
谷口吉郎・谷口吉生氏と言えば建築好きの間では知らない人がいないといえるほどの著名な建築家で、谷口という共通の苗字からわかる通り親子建築家です。
父である谷口吉郎は東宮御所や帝国劇場の設計者として昭和初期~中期において活躍し、息子である谷口吉生氏は葛西臨海水族園やニューヨーク近代美術館 新館、GINZA SIXなど昭和後期~平成をまたにかけて活躍する日本を代表する建築家です。
ちなみに東京上野の東京国立博物館では東洋館を谷口吉郎氏が、法隆寺宝物館を谷口吉生氏が設計していて、親子2人の作品を一挙に見ることができるので、上野を訪れた際は是非一度訪れてみてほしいおすすめスポットです。
■アクセスと施設情報
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館は金沢駅から車で約15分程の場所にあります。
歩きですと少し距離があるので金沢駅からやその他主要な観光スポットから出ている周遊バスでアクセスするのがおススメです。
最寄りのバス停からは歩いて1~2分程度で到着するので、基本的にはバスを使ってのアクセスがメジャーなルートです。
また金沢市では公共シェアサイクルも発達していて、アプリから簡単にレンタルできるので、自転車でアクセスするのもおススメです。(私はこの金沢のレンタサイクルでで電動アシスト自転車の素晴らしさを知りました)
シェアサイクルまちのりHP:https://www.machi-nori.jp/
開館時間と入館料は以下の通りです。閉館がちょっと早めの時間なので注意が必要ですが、市営の施設ということもあって入館料はかなりリーズナブルです。高校生以下は無料ですので、建築に興味のある中高生なんかにもぜひ訪れてみてほしいですね。
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
入館料(常設展):
一般:310円
高校生以下:無料
休館日:毎週月曜日、年末年始、企画展の展示替え期間
※月曜日が休日の場合はその直後の平日
公式HP:https://www.kanazawa-museum.jp/architecture/index.html
では早速見ていきたいと思います。
2.早速見学!まずは外観が面白い!
金沢駅からバスで15分ほど移動すると谷口吉郎・吉生記念金沢建築館に到着です。
バス停から目と鼻の先に見えてくるのは石とガラスとアルミで構成された現代的な建物です。
まずはぐるりと外観を巡ってみましたが、現代的でスタイリッシュな素材が組み合わさった建築の美しさにまずは驚きます。
谷口氏の建築は東京国立博物館 法隆寺宝物館やGINZA SIXなど現代的な素材を使ったスタイリッシュな建築が多いのですが、このミュージアムも正にそんな谷口建築の特徴が色濃く現れています。
この現代性の中にきちんと伝統的な建築要素であったり周辺環境への配慮が込められているのが第1の見どころです。
例えば正面のアルミのルーバーは「すだれ」を意識したデザインになっていて、現代建築のスタイリッシュなデザインの中に日本の伝統建築らしさや、やさしさを感じます。
この建物が建つ敷地の周辺は神社仏閣が数多く建っていたり、金沢の有名観光地「西茶屋街」からほどなくの場所ということもあり、昔ながらの建築が数多く残る地域です。
そんな地域においてスタイリッシュなデザインの中に抽象化された和の要素が表現されたこの建築はとてもよく映えています。
こちらはエントランス。地上部は透明なガラスのファサードや軽やかな水平庇が配されていて、街とのつながりを意識したデザインになっています。
シンプルすぎてついつい見逃していますが、建築好きとして無駄な要素が一切排された美しいディテールに目を奪われます。
例えばこちらの庇も通常であれば雨どいなど余分な要素が出てきてしまうところが完璧に隠されています。階段の手すりも余分な支柱は一切なく壁から浮き出た彫刻作品のようです。
また外部空間では、道路に面したガラス面だけでなく敷地の奥に入った側面部や裏側も是非注目したいポイントです。
建築の周りは回遊性をも足せるように計画されていて、エントランスの脇を通って裏の犀川に降りられるようになっています。
この時ミュージアムの内部が側面の開口から窺い見ることができるのですが、こちらも素敵な空間でした。
建物の内部と外部の境界がまるでないかのように、内部が外部に、外部は内部に吊ずいているような演出を見ることができます。
3.内部もスゴい!外からは想像できない開放的で立体的な空間が広がっている!
内部に入ってまず初めに目にするロビー空間はチケットカウンター、ミュージアムショップ、カフェなどが入る細長い直方体の空間です。
外観は周辺の街並みに合わせるためにブロックに分割されてそんなに大きな建物ではない印象だったのですが、こちらのエントランスでそんな外部の印象は吹き飛びます。
上方向には吹き抜けが、右手にはガラスの開口によって街に開かれているので、小さいスペースの中にも人を圧倒するような空間が広がっています。
この空間の広がりは展示空間にも発揮されていて、吹き抜けやスキップフロアによって大きな展示空間が確保されています。
まさにこの建築自体が展示物の一部のよう。
企画展示室が地下1階に設けられているのですが、面ごとに綺麗に素材が分かれた内装や綺麗に切り取られた開口はそれだけでも見応え抜群です。
こちらのホール上の空間は作品展示だけでなく市民イベントなど多目的に使えるようにもなっていて、単にミュージアムで完結するのではなく市民や街に開かれた施設であろうとする姿勢が感じられいます。
これらの建築空間を巡りながら谷口吉郎の足跡や会期ごとの特集を巡っていくのはワクワクしますね。
4.建築空間がそのまま再現された遊心亭は必見!
企画展示を見終えた後は2階の常設展示コーナーに進みます。
2階の展示はこのミュージアムの目玉の一つである迎賓館赤坂離宮 和風別館「游心亭」の広間と茶室を再現した空間となっています。
游心亭はかつて谷口吉郎氏が設計した傑作建築で、日本の美学を海外の賓客に紹介することを目的に1974年に作られました。
そんな「游心亭」をミュージアムの中に完全再現しているのがこちらの常設展示なのです。
先ほどまで見ていた企画展示室がシンブルで現代的な谷口吉生氏の作風だったのに対して、こちらは父である吉郎氏のデザインが広がっていて、2つの空間のコントラストも見どころの一つです。
和の素材や技術を存分に使いながらも、吉郎氏ならではの特徴的な意匠を心ゆくまで堪能できます。
例えばこちらの写真でも見られる平天井と傾斜天井の組み合わせはかなり独創的です。茶室や広間として床と天井に挟まれた1つの空間をつくりつつ、ふと視線を移すと傾斜天井の先にある景色に目が行くような独特なデザインとなっています。
伝統的な中に独自の創意工夫と新しい感覚を持ち込んでいるあたりが、昭和を代表する建築家谷口吉郎氏の独創性を感じます。
ちなみに本家の游心亭の入場料は2000円なので、310円で入れるこのミュージアムの料金のリーズナブルさはスゴいです 笑
広間の傾斜天井の先に見える外部の景観と水盤も必見です。
この傾斜天井の先にある開口からの眺めは本家のにある游心亭でも大きな見せ場となっていましたが、実はここで実際の游心亭とは違ったひと工夫がなされています。
本家の游心亭では窓の外にある池の水面は床の高さよりも低かったのに対して、こちらのミュージアムでは床のレベルと面になるように水盤の高さが合わせられています。
こうすることでより内部の空間と外部の空間の連続性が強まっているのがとても面白いですね。
これは息子である谷口吉生氏が今回取り入れたアイデアなのですが、このアイデアによって見事に外部の景色を引き込むことに成功しています。
谷口吉生氏といえば代表作である西臨海水族園では水盤と東京湾を連続させていましたが、そこで用いた手法を今回の建築にも使っています。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館ではガラスの開口の先に犀川という川が流れているのですが、葛西で試した手法を金沢の犀川で応用しているのですね。私が訪れたのは11月の紅葉の季節でしたので水盤に映る木々の彩と合わせてものすごく美しい景色を見ることができました。
2階の展示を堪能した後は、階段を下って最初のエントランスホールに戻ります。
小さな美術館でしたが、谷口吉郎氏・吉生氏の工夫に溢れた様々な空間をじっくり体験することができて大満足でした。
ちなみにこのエリアはミュージアムショップとカフェが設置されていて、今まで巡った空間や展示を思い出しながら一息つくの時間は至福のひと時でした。
ミュージアムショップでは谷口氏の書籍の他、過去の展覧会のカタログなんかも売られていて物欲が刺激されまくりでした。
作品集は写真を眺めているだけでも新しい発見がありますし、図面と合わせて見てみるとものすごく勉強になるので建築学生なんかにはこの機会に是非じっくり見てみてほしいです。
5.合わせて見たい金沢の谷口建築
最後に谷口吉郎・吉生記念金沢建築館と合わせて見たい金沢の谷口建築について紹介したいと思います。
吉郎氏の生まれ育った街ということもあり金沢市内には是非合わせて見たい谷口建築が満載です。
西町教育研修館など残念ながら取り壊されてしまって現在はみれないものもありますが、親子共演の作品から最新の現代建築まで様々な建築を見ることが出来ますので、金沢を訪れた際には是非参考にしてみてください。
■石川県立伝統産業工芸館(谷口吉郎)
まず初めに紹介する石川県立伝統産業工芸館は別名いしかわ生活工芸ミュージアムともいわれ、元々は石川県立美術館として建てられた建築です。
美術館の移転後の現在は石川県の伝統工芸品の示や工芸体験を行なうミュージアムとして活用されています。
設計は父である谷口吉郎氏が行っていて、日本のモダニズム建築をけん引した谷口吉郎氏らしい、西洋と日本の伝統建築を融合させたような建築に注目です。
兼六園に隣接しているので、兼六園や21世紀美術館を巡った後に合わせて訪れることをおススメします。
設計:谷口吉郎/谷口吉郎建築設計研究所
所在地:石川県金沢市兼六町1-1
竣工:1959年
■金沢市立玉川図書館(谷口吉郎+谷口吉生)
続いて紹介する金沢市立玉川図書館は谷口吉郎・吉生記念金沢建築館と石川城のちょうど中間地点付近にある建築です。
赤煉瓦造で1913年に竣工した専売公社に隣接して建てられた新館は、谷口吉郎氏と谷口吉生氏の親子が協力してデザインした貴重な建築です。
煉瓦の近代建築に対して現代的な素材の図書館のコントラストが美しいのですが、この新館部分も建築から40年以上の時を経ていい色に変色しています。
環境の取り込み方や素材の組み合わせなど谷口氏の特徴がよく分かる隠れた名建築です。
設計:谷口吉郎+谷口吉生/谷口建築設計研究所
所在地:石川県金沢市玉川町2-20
竣工:1978年
■金沢市文化ホール(谷口吉生)
金沢市立玉川図書館からすぐのところにある金沢市文化ホールも谷口氏がデザインに関わっています。
芦原義信と共同でデザインされた建物は、何といっても逆ピラミッド型の外観のインパクトが強い建築です。
一見奇抜に見えますが、兼六園などでも見られ、木の枝が降り積もった雪の重さに耐えられるように枝先をヒモで吊り支える「雪吊り」がモチーフになっていると知れば納得がいきます。
また、大鍬の外観だけじゃなく屋根上部にある細いテンション材の使い方や、外溝で流れる水の扱いなどにも谷口氏の特徴が出ているので、そういった場所に注目して見ると興味深い建築です。
設計:芦原義信+谷口吉郎建築設計研究所
所在地:石川県金沢市高岡町15-1
竣工:1982年
■鈴木大拙館(谷口吉生)
最後に紹介する鈴木大拙館は金沢出身の哲学者である鈴木大拙の足跡や思想を広く伝えつつ、来場者自身の思想の場とすることを目的に建てられた記念館です。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館と同じくガラスやコンクリートといった近代的・人工的な素材を組み合わせつつ、金沢の武家屋敷を思わせる外観や、水盤の使い方など谷口吉生氏のエッセンスが凝縮した建築です。
まるで人の頭の中に入りこんだような不思議な空間体験をすることが出来、数多くの建築が金沢で最もおススメしたい建築でもあります。
詳細記事
・鈴木大拙館がスゴい!谷口吉生氏の集大成ともいえる建築をレポート【石川県金沢】
設計:谷口吉生/谷口建築設計研究所
所在地:石川県金沢市本多町3-4-20
竣工:2011年
【金沢建築旅情報】
ちなみに金沢でホテルや宿を探すなら色々なサイトがありますが、結論としては大手サイトをみてみるのが断然便利でお得です。
まずはじゃらんや一休を見ると、候補となるような宿はすべてヒットしますし、スケールメリットによって結局一番お得になるのが大手のサイトなんです。
>じゃらん で金沢周辺のホテル・旅館・おススメの宿をみる
>一休 で金沢周辺のホテル・旅館・おススメの宿をみる
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2024年4月18日には「一級建築士矩子の設計思考」第3巻が発売になりました。
いかがでしたでしょうか。
建築好きであれば必見の注目スポット「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」
皆さんも金沢を訪れる際は是非トリップしてその空間を体験してみてください。
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