今回は神奈川県横浜市の国道駅を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・国道駅を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・国道駅の建築的な見どころや注目ポイント
1.昭和初期の遺構が今も残された駅舎に注目
今日訪れたのは、横浜市鶴見区にある国道駅(こくどうえき)です。
国道駅は1930年に鶴見臨港鉄道の駅として開業した駅で、近代遺構好き界隈ではかなり名の知れた存在でもあります。

鶴見臨港鉄道線は太平洋戦争中に国有化され、現在の鶴見線の駅となりました。
鶴見駅から港湾地帯に向かう1駅目の駅であるこの国道駅は、昭和初期につくられた構造体がそのまま残されているのが大きな特徴。

電車を降りホームを見渡すと外側に現代的な建物が見え隠れしますが、どこか違和感を感じます。例えば地上から大きく持ち上げられた高架のホームですが、現代の都心の駅舎には珍しくエレベーターもエスカレーターもありません。
ホームを降りた人々は分厚いコンクリートのトンネルをくぐり改札へと向かいます。

2つのホームは階段を降りたブリッジで繋がっていますが、低い天井と無骨な内装、ブリッジの下に見える薄暗い通路に不安感と期待感が高まります。
この国道駅を手掛けたのは、主に大正時代から昭和初期に建築家・土木技術者として活躍した阿部美樹志(あべみきし)。阿部は通称コンクリート博士とも呼ばれ、国道駅の他に高架橋やデパート、時には佐賀県庁舎等の公共建築を手掛けています。
その功績に対して一般的な知名度はそこまで高くないですが、実際には技術者として、建築家として、研究者として様々な顔を持ちながら日本の鉄筋コンクリート工学研究と実践の両方を牽引してきた人物です。

降車した人は思ったより多かったのも印象的でした。
無人駅と言っても鶴見駅から徒歩圏内、横浜にも都内にも短時間で行ける立地の良さなので、ホームから見た通り近隣にはマンションも多く利用者もそこそこいることが窺えます。

2.無骨だけれど歴史と美しさが詰まった空間を堪能
無人駅である国道駅は乗降者が過ぎ去った後は駅が静寂に包まれる静かな時間が訪れます。

こちらの改札は近年Suica対応がなされて利用しやすくはなっていますが、それでも未だに自動改札機すらありません。
高架下と歩くと迫りくる圧倒的な物質感を感じると共に、コンクリートに自分の足音だけが反射し、どこか別の世界にきたような感覚にさせてくれます。

改札を出るとアーチの躯体がリズミカルに連なる圧倒的な土木空間が広がっています。
両側にはかつて営業していたであろう店舗が何十年も前から変わらぬ姿で今も佇んでいます。
今はすっかり廃れていますが、開業当時は店舗が立ち並び駅とデパートが一体化したようなモダンな建物だったといいます。

板を張られて塞がれている店舗もありますが、営業はしていないけれど窓に灯りはついているものもあり、今も確かに人の営みが続いていることには正直驚きました。

建築好きとして気になるのは絶妙な位置に設けられた窓の位置で中は3層になっているのでしょうか。
長い年月の間で様々に使われ方も変化したと思いますが、どのようになっているか気になります。

トンネルを抜けた先の側面も味わい深いです。
2階には躯体の曲面アーチの天井と同じモチーフの半円形の窓があって大変モダンなのですが、よくみるとガラスは割れたままになっています。

コンクリートの堅固な構造体に対して、古びた看板や古いものから新しいものまで様々な時代の要素が重ね合わさるように存在しているのもこの駅の魅力のひとつ。
昭和から平成までの何十年という時間経過の中で変わらないものと共に、ゆっくりと、しかし確実に変化していくその痕跡がそこかしこにみられました。
3.変わるものと変わらないものの対比が際立つ駅舎
こちらは反対側の出口です。
JRの看板だけが新しいのが何とも不思議ですが街自体もトンネルを抜けるとハッキリと現代の街並みに切り替わり、トンネル状の駅舎だけが時空から切り離されているようです。

もともと国道駅という名前は現在の国道15号(旧国道1号)と鶴見線が交差することから名付けられました。
はじめは安直な名前だと思っていましたが、よく考えてみるとこの駅が建てられた約100年前は現在のマンションや商店が建ち並ぶ街並みとは随分違っていて、この地のシンボルとして国道と鉄道が存在してたことを改めて感じさせてくれます。
現代から見れば異質なその姿も、この駅が変わっているのではなく、むしろ変化したのは周りの風景のほうなのでしょう。

駅の外の街並みをひと通り巡った後は、再び先の見えないトンネルに入っていきます。
そして誰もいない改札と分厚いコンクリートの通路を通ってホームに降り立ちます。
改めてホームを見てみると軽やかに架かる鉄骨のアーチが、足元にあった分厚いコンクリートと対比されられるのも面白いです。

昭和の空気をパッキングしたような素敵な駅舎をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
国道駅
設計:阿部美樹志
所在地:神奈川県横浜市鶴見区生麦5-12
竣工:1930年
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