今回は愛知県名古屋市にある名古屋市市政資料館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・名古屋市市政資料館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・名古屋市市政資料館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・名古屋市市政資料館の建築的な見どころや注目ポイント
1.名古屋に残る赤煉瓦の近代建築を訪問
今日訪れたのは、愛知県の名古屋市にある名古屋市市政資料館です。
名古屋といえば、このブログでもこれまで多くの建築を取り上げてきましたが、今日紹介するのは大正時代に建てられた近代建築です。
名古屋テレビ塔などのある久屋大通公園の北端からさらに数分歩くと、今回の目的地である名古屋市市政資料館が見えてきます。
名古屋市市政資料館は、元々は、1922年に控訴院として建てられた建物です。

控訴院とは現在の高等裁判所にあたるもので、東京、大阪、名古屋、広島、長崎、高松、宮城、札幌の8ヶ所に設けられていました。
現在、現存する控訴院の建物はここ名古屋の他には札幌のみとなっていて、札幌より4年早い1922年に建てられた名古屋控訴院は現存する最古の控訴院建築ともいえます。
ちなみに札幌の旧控訴院の建物は、現在は札幌市資料館として活用されています。
名古屋控訴院は、1979年まで50年以上に渡って高等裁判所・地方裁判所として利用されたのち、現在は名古屋の市政を伝える資料館として保存・活用されています。

煉瓦造りの3階建ての建物は、赤い煉瓦と白い花崗岩のコントラストが鮮やかなネオバロック様式の建物となっています。
ネオバロック様式を基調とした建物といえば1914年に竣工した東京駅(設計:辰野金吾)や、もう少し時代を遡ると1895年に竣工した霞ヶ関の法務省旧本館 赤れんが棟(設計:ヴィルヘルム・ベックマン+ヘルマン・エンデ)が思い浮かびます。
時代の変遷とともに外国人技術者から日本人建築家へと徐々に技術が継承・咀嚼されていった様を、100年以上経った現在でも実物の建物で体験できるのは幸せです。(主な設計者の山下啓次郎と金刺森太郎は帝国大学で辰野金吾の教え子でもありました)
シンメトリーの建物は、堂々とした重厚さや安定感とともに、華やかさと知的さを身に纏っていてとても魅力的です。

建物はぐるりと裏手まで堪能することができるのも嬉しいポイントです。
名古屋中心部からは少し距離があるので、混雑もほとんどしていなくゆっくり細部まで建物を楽しめました。
ちなみに名古屋控訴院が完成した翌年の1923年には関東大震災が起こります。
関東大震災後には地震による被害から煉瓦造の建物が一気に減少することになります。
そういった意味でも名古屋控訴院は、日本の煉瓦造の近代建築の最後期の建築であり、ひとつの到達点ともいえます。
2.見どころ満載の建築と展示をたっぷりと堪能
建物の中に足を踏み入れると、この建物の大きな見どころの一つである中央階段がお出迎えしてくれます。

様々な色で塗り分けられ、細部まで細かい装飾がなされた階段空間は圧巻ですが、厳格なシンメトリーなデザインにより一つの空間としてまとまってみえるのも素敵です。

2階から3階が大きな吹き抜けになっていて、奥と天井のステンドグラスから光が降り注いでいます。

天空から光が降り注ぎ、照らされる様は、裁判所という場所の意義と併せてみても効果的な演出となっています。
日本古来からの言い方でいうと、「お天道様がみている」となるのでしょうが、これをバロック風の空間やステンドグラスといった西洋の要素により成立させているのが面白いです。

素材の質感も味わい深く、様々な素材とデザインによる内装はどこを見てもため息のでるような美しさです。

2階は会議室や集会室として利用されています。
集会室や展示室は比較的リーズナブルな使用料で市民に開放されています。
3階は常設・一般展示スペースとなっています。

展示スペースでは、市制の歴史や名古屋の災害や戦災の歴史などの常設展示のほか、公文書などの歴史資料も保存・展示されています。
一部の部屋は会議室や法廷が復元されていて、当時の建物の様子を体感できます。

長い歴史の中でない内装は度重なる改修が行われていましたが、復元に際して当時の図面や写真の他、様々な資料を参照したり聞き取り調査を行ったとのこと。
細部まで凝った内装や照明だけでなく、調度品も見どころが満載です。

こちらの陪審法廷は昭和初期の15年間使われていた法廷の再現展示室です。
建物の中央にあり、シンメトリーに配置された天井のステンドグラスからの光がとても印象的でした。

また、法廷の復元展示は明治憲法下の法廷と現行の憲法下の法廷の両方をみることができるのも面白かったです。

こちらは図書室ですが、建物の部屋全体を使った展示によって、当時の様子がありありとみてとれます。

日の字を横にした配置の建物には2つの中庭が設けられていて、建物内から外装を堪能することもできます。
正面からは見づらかったドームや屋根を間近でみることもできるので、訪れた際は要チェックです。
展示スペースを見学した後は、2階の喫茶室でひと休み。


これまでみてきた展示や建物の余韻に浸りながら物思いに耽る至高の時間を過ごしました。
素敵な建物と展示をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメの建築ですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
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名古屋市市政資料館
設計:山下啓次郎+金刺森太郎/司法省営繕課
所在地:愛知県名古屋市東区白壁1-3
アクセス:市役所駅より徒歩約4分
竣工:1922年
備考:重要文化財


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