世界遺産になったコルビュジエの国立西洋美術館って何がすごいの!?【東京上野】

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今回紹介するのは世界文化遺産への登録が決定された「国立西洋美術館」です。
東京都内で見れる初めての世界遺産になった西洋美術館ですが、何がすごいかというのを端的にあらわすのは難しい建築でもあります。
【上野】国立西洋美術館1 

今回はそんな西洋美術館の見方やポイントについてご紹介したいと思います。

①そもそも設計者のル・コルビュジエって?

ル・コルビュジエは1887年生まれのフランスの建築家です。
1922年に事務所を構え、翌年に自身の建築論をまとめた「建築をめざして」を出版して注目を浴びた後、近代建築運動の中心人物として活躍します。
このル・コルビュジエと、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと合わせて「近代建築の三大巨匠」とも呼ばれています。

19世紀までの建築を乗り越えた20世紀の建築の時代はどういう建築であるべきかの指針を示した人物で、コルビュジエによる建築理論はその後の建築家に大きな影響を与えています。
21世紀の現代においてもこのコルビュジエらが行った20世紀の建築の大転換の延長線上でしかないという意見もあるくらい現代においても重要な人物なのです。

②西洋美術館とコルビュジェについて

この西洋美術館のポイントの1つとして、ル・コルビュジエによって提唱された近代建築理論の結晶であることが挙げられます。
コルビュジエが活躍した20世紀初頭は建築界にとっても大転換期であり、建築だけでなく人々の生活や価値観が大きく変化する時代でした。
それまでの伝統的な建築に対して、新時代の建築はどうあるべきか、それを示したのがこの世代の建築家であり、その実践を行ったのが近代建築運動の筆頭建築家であるコルビュジエであり、その作品群なのです。
西洋美術館は一部当初の計画とは異なったものの、このコルビュジエの建築理論が見事に結晶され、その空間を体験できる建築というところがすごいのです。

このコルビュジエの提唱した近代建築は何が新しかったのか、建築界に起きた大変革と共に見ていきたいと思います。

③近代建築は何が新しく、何がすごいのか

近代建築について考えるときのポイントは、近代建築運動(モダニズム)の少し前に起こった産業革命にあります。もう少し詳しくいうと産業革命によって生まれた新しい素材(ガラス・鉄・コンクリートなど)を建築家が扱えるようになったことです。
これらの新素材が登場したことにより、今まで何百年と続いてきた建築のつくり方・考え方に大きな変化が起こります。
これまでの建築は石が重く地面に食い込み土地から離れられなかったのですが、新しい素材を使えば建物は簡単に持ち上がり土地から自由になります。これまでのように土地に縛られず国境や古いしがらみを超えた建築として提唱されました。これは石やレンガを積んで建築してきたヨーロッパの人々からしてみればまさに革命的な出来事です。

これまでの建築は分厚い石で建物を支えており、窓は石の隙間にあるため当然に光も余り入りませんでした。そもそもそれまでの建築は教会が主役でしたから、極端な言い方をすると建築は神の為にありありました。もちろん光も神の為の建築を演出する為に使われていました。
しかし建物を細い柱のみで支え壁や窓を自由に変えられるようになったこと、そして20世紀の価値観の変化から、神ではなく人間が主役の建築こそが必要だという考えがが共有されていきます。
人間の動線や営みの為に建築をつくり、太陽の光もたっぷり浴びて人間が生を謳歌する為の建築、という概念が世界中に広がります。土着と宗教からの脱却と、人間の為の建築、それが近代建築のテーマでした。

④コルビュジエが提唱した「近代建築5原則」

そんな近代建築とは具体的にどのようなものになるのか。
コルビュジエは分りやすく「近代建築5原則」としてまとめました。
①ピロティ
②自由な平面
③水平連続窓
④自由な立面
⑤屋上庭園
の5つです。
これは石積み・レンガ積が主流であった西洋の建築を脱却し、柱、床、階段が建築の主要要素だとするコルビュジエの考えを端的に示したものです。
この5原則を元に設計されたサヴォア邸という住宅はコルビュジエの代表作であると当時に建築史における住宅建築の最重要建築であるといわれています。
 
国立西洋美術館はル・コルビュジエの中でも比較的後期の作品ですが、西洋美術館にはこれらコルビュジエの生み出した近代建築のエッセンスが結晶化して表現されています。
【上野】国立西洋美術館2
例えばエントランスの「ピロティ
柱で支えられた建物は宙に浮き、石の壁に変わって透明なガラスから光が差し込みます。
今となっては当たり前に見かけるピロティですが、これもコルビュジエの発明なのです。

このピロティは建物の正面性や権威性をなくし、利用者に開いた建築とすることにも貢献しています。
これまでの美術館の多くは建物の正面に立派な入り口があって、建物に入る人とそうでない人を明確に区分していました。西洋美術館ではこの建物の内外を透明なガラス一枚で隔てることで広場を建築に取り込み、オープンな場としての美術館を体現しています。
こちらは建物内部から観た写真です。建物の内外の境界が打ち消され、広場と街と一体になっています。
ここではピロティを一例に挙げましたが、近代建築5原則は単に形の上でのコードではなく、「それによって可能となったこと」に価値があるのです。

⑤近代建築のその後について

コルビュジエが提唱した近代建築の原則はその後の建築に大きな影響を与えました。今やピロティはおろか自由な平面・立面などは言うまでもなく当たり前のこととなっています。また、屋上庭園も特別なものではありません。
これは決してコルビュジエだけの影響というわけではないですが、周りの建物を見渡しても現代の我々の暮らす街もこれらの近代建築の建築像の延長線上にいることは間違いはありません。

しかし現代の我々は、近代建築(モダニズム)を経て、ポストモダンを経ても未だ、その先の建築像を掴めきれずにいます。コルビュジエの提唱した建築は過去のものではなく、今現在の我々と地続きの出来事なのです。
次の時代の新しい建築像は、もうすでに顔を見せているのかもしれませんし、コルビュジエの時代の産業革命のように、もう一度社会的に大きな革命が起きないとでてこないかもしれません。
しかし歴史的転換とそのアンサーとしての近代建築を見ることは次の建築を見ていく上での大きなヒントとなります。そしてその近代建築の結晶が体感できる西洋美術館は、まさに今見るべき、参照すべき貴重な財産であると言えます
まさに世界遺産。是非ご自身の目と体で、この建築を味わってみて下さい。

■まとめ
産業革命によって新たな建築が生まれる素地ができた。
旧来の土地と宗教に変わる新たな建築のエッセンスを「近代建築5原則」としてまとめて作品にしたのがル・コルビュジエ。
近代建築の思想のエッセンスを空間として体験できるのが国立西洋美術館
近代建築を知り、その上で次の時代の建築像を模索しよう

名称:国立西洋美術館
設計者:ル・コルビュジエ(+前川國男)
所在地:東京都台東区上野公園
最寄り駅:上野駅徒歩5分
竣工:1959年


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